家族

施設に入居している祖母に面会に行く。子どものことはもちろん私のことはもう分かっていないようだった。コミュニティ内で見栄を張り合うための道具として使われていた高校生までの私はなんだったのだろうと思う。帰り際、祖母は「カバンを取って」と母や職員さんにお願いしていたが皆ハイハイといった感じで相手にせず、そのまま強制終了のようなかたちでお別れをした。母いわく、私たちにお金を渡したかったのだろうということだった。

お金を渡すことがそうであるように、周囲に私たちのことを自慢げに話すこともまた祖母の愛情表現であったのだろうと今更ながら思う。見栄を張ることと私たちを大切に思う気持ちとが絡まった結果だった。けれども私はそれが嫌で、言えば黙らされた。次第に言うこともしなくなった。上手くコミュニケーションを図っていれば違う未来があったかもしれないが、それはそれで形を変えた抑圧のかたちなのではと帰り道、ぽつりぽつり里山に植る満開の桜の木々を眺めながら思った。それでもカバンを取ってくれという要求を無視される祖母を見るのは少し悲しかった。

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