橙書店の店主、田尻久子さんの書評エッセイ集。静かで温かみのある文体から、本、そして言葉に対する愛がしんしんと伝わってくる。
本の中には何度も「喪失」という言葉が出てくる。喪失、死、不在、失われるもの……。それらがテーマの本を選ばれているところに、言葉は喪失を慰め、受け入れ、捉え直す力を持っているという、田尻さんの言葉への信頼が見えてくる。
“「あなたにとって書くこととは?」と質問されたとき、滝口さんは「不在のものや人を思い出すこと」と答える。” P95
田尻さんの文章にもこうした視点が宿っていると感じられた。本を読むことは何かを得るというよりは、欠けていた何かを取り戻すような行為だと読みながら思っていた。一方で、何かを手放すことができる行為だとも。
気になった本
藤井聡子『どこにでもあるどこかになる前に。』
左右社編集部編『仕事本』
藤本和子『ブルースだってただの唄』
村井理子『家族』
この本は先月、本のすみかさんで手に取りました。出会えてよかった!


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