波のように消える

大学生が転落死した。中学生に脅されて。ビルからビルへ飛び移った形跡がある。というニュースを昨日五回ぐらい観て、またかと思ってしまうのを認めたくなくて、今日は人間国宝さんを観たあとテレビを消した。水歌通信を読んでいると背後からゔゔゔゔとじいさんが唸るような声がする。生後一ヶ月の人間は、服を着た姿はクリオネのようであり、顔はまんじゅうのようである。顔に陽があたっていたので足元に布団を積んで影をつくった。

水歌通信を読み終える。まぼろしのように重なる両者の物語。一貫して小雨降る川のような静けさがページを漂っていた。雨が降ったり日が差したり穏やかな波のように変化する空を背にして読むのが合っていた。

かさついた唇の下 唸り声 いつか波のように消えてゆくもの