幅允孝『差し出し方の教室』

“例えば、本棚の棚板の木の種類、傍らに置くテーマサインの材質、そのタイポグラフィ、テーマの名付け方、書架の前の床材、本を照らす照明計画…。あらゆる周辺環境が、その本を手に取ろうとする心持ちとつながっていると思えるのです。(略)今まで考えもしなかった細やかなことまで熟慮しないと本は届かなくなってしまっているというのが正直な気持ちです。” vi

ブックディレクターである幅允孝さんが物事の差し出し方について記した一冊。様々なお仕事をされている七名の方とのインタビューと、その総括で構成されています。

「周辺環境まで考えて差し出す」という上記の引用を読んで、かつてKPOP界では中心にアイドルがいてその周辺に楽曲やミュージックビデオやファッションがあったが、だんだん世界観を作り上げた上で売り出すことが主流になり、アイドルも世界観を伝えるための一部になって楽曲やミュージックビデオと同じような素材として扱われるようになっている…というねほりんぱほりんの元KPOP練習生回を思い出したり。

とどまらない視覚重視の流れ。けれどもただ視覚的におしゃれにしてもだめで、そこに血が通っていないと伝わらない。じゃあ血が通っているとはどういうことだろう、ということが一冊を通して見えてくる。

本を作るとき、内容そのものが良ければ手に取ってくれる人はいる、装丁まで気を配らないと手に取ってもらえない、のあいだで揺れることがよくあるけれどもそのどちらも正解で、だから一つ一つ丁寧にやっていきたい。webで使うために毎度できあがった本を大真面目にカメラで撮影しながら、自分何やってるんだろうと虚しい気持ちになっていたりしたけれども、それでよかったのだとこれまでの虚しさが成仏した。